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新FITが動き出す[後編]

これからFIT認定を受けようとする事業者にはもちろん、すでに認定を受けている事業者にも大きな影響を及ぼす、新FIT法。その改正のポイントとは? 買取価格の決定方法・買取義務者の変更について。

リードタイムなど電源特性に応じて
「数年先の買取価格」まで提示

新FITにおいて発電事業者への朗報となっているのが、買取価格(調達価格)の決定方式の見直しです。これまでは、どの再エネについても年度ごとに1年だけの買取価格が決められてきましたが、これからは違います。開発期間などリードタイムを電源ごとに検討し、電源の特性に応じて、あらかじめ複数年の買取価格が定められることになりました。

どの電源について何年先の買取価格まで提示するかなど、詳細はこれから経産省の審議会(調達価格等算定委員会)で検討されることになります。例えば、リードタイムの極めて長い地熱などについては、4年くらい先の分まで一括決定される可能性がありそうです。風力・中小水力・バイオマスについても、それぞれ複数年まとめて決定される予定です。また、住宅用太陽光については、価格低減のスケジュールを明らかにするという方針が示されています。

事業計画の策定にあたって、将来、認定を受ける際の買取価格をあらかじめ知ることができるので、事業リスクの軽減になると期待されます。ファイナンス(資金調達)に関しても、事業の予見可能性が高まるので有効です。

大規模太陽光の買取価格は「入札」で
不正行為には厳しい罰則も

大規模太陽光発電については、買取価格の決定方式が根本的に変わります。入札制の導入です。経産省等が買取量や上限価格などの入札実施指針を策定し、発電事業者は発電設備とともに希望する買取価格(発電した電力を買い取ってもらう価格)を入札。安い買取価格を提示した発電事業者から優先的に落札し、FIT認定を受けられるという仕組みです。

経産省は、これにより発電コストの安い事業者の参入が優先され、買取費用が抑えられるため、国民負担の抑制につながるとしています。しかし、⼊札の対象となる⼤規模太陽光が何MWからなのかなど、詳しくはまだ決定していません。定められた価格で全量を買い取るという固定価格買取制度の根幹に関わる大変革であるだけに、今後の詳細制度設計にも注目していきたいところです。

なお、入札にあたっては、談合などの不正行為をした者には3年以下の懲役・250万円以下の罰金を科すなど厳しいも刑罰も定められています。

再エネ電気の「買取義務者」が
小売電気事業者から一般送配電事業者に

電力小売全面自由化のもと、小売電気事業者に大きな影響を及ぼす改正も、新FITには盛り込まれています。買取義務者の変更です。買取義務者とは、発電事業者が発電した再生可能エネルギー電気を買い取ることのできる事業者のこと。これまでは電力販売を行う小売電気事業者が買取義務者でしたが、新FITのもとでは一般送配電事業者が買取義務者となります。

一般送配電事業者とは、電力のネットワーク部門を担う事業者であり、小売全面自由化後も大手電力10社がそのまま地域独占している事業部門です。新FITでは、発電事業者が発電した電気は、この一般送配電事業者がすべて買い取ります。言い換えれば、小売電気事業者はこれまでのように、再エネ発電事業者からFITを使って直接調達することはできないのです。

ただし、新FIT法施⾏⽇(2017年4月1日)以前の買取契約分については、引き続き⼩売事業者が買い取ることになります。

再エネ電気は「卸電力取引市場」で売買
個別契約を結べば「地産地消」も可能

それでは、再エネ由来の電気を調達したい小売電気事業者はどうしたらよいのでしょうか。再エネ由来の電気を買いたいという消費者のニーズに、小売電気事業者はどう応えたらよいのでしょうか。小売電気事業者が自ら再エネ発電設備を所有していれば問題ありませんが、それは一般的ではありません。また、FITを使わずに再エネ発電事業者から調達できれば、もちろん新FIT法には縛られませんが、現状では調達コストが嵩んでしまい事業モデルとしては例外的なものにならざるを得ません。

新FIT法では、小売電気事業者のFIT電気の調達(仕入れ)について、二つのパターンが想定されています。ひとつは、卸電力取引市場での買い付け。一般送配電事業者には、買い取った再エネ電気を卸電力市場で売買することが義務づけられていますから、小売電気事業者は市場において自由に仕入れることができるというわけです。

ただし、卸電力取引市場で取引される電気にはFIT電気等の区別はなく、すべて同じ電気として扱われます。FIT電気だけを選んで仕入れることはできません。小売電気事業者が販売する電気の内訳(電源構成)を明らかにさせる意味でも、FIT改正とともに卸電力取引市場の取り扱いルールにも見直しが求められます。

二つ目は、発電事業者(A)と小売電気事業者(B)が個別に契約を結んでいる場合です。個別契約が結ばれていても買取義務者が一般送配電事業者であることは変わりませんが、この場合には、一般送配電事業者が発電事業者(A)から買い取った電気は小売電気事業者(B)に限定して供給しなければならないとされます。再エネの地産地消を可能とするスキームとして評価されますが、一般送配電事業者が介在することで、インバランス負担(電力の需給調整に関わる負担)を誰がどう担うかなど、新たな課題も生まれています。

パブリックコメントで声を届けよう

今回の法改正で新FITの大枠は固まりました。ただし、上述のとおり詳細な制度設計はこれからです。詳細は、経産省の審議会等で検討され、内容ごとに施行規則として省令等により定められることになります。

省令案については、その都度、パブリックコメントが募集される予定です。現在も、新FIT法にもとづく新しい施行規則について、第1回目のパブリックコメントが実施されています(意見受付期間:2016年6月15日~7月14日)。この機会に、新FIT法の内容をチェックし、経産省に声を届けてみてはいかがでしょうか。

FITのあり方次第で、日本のエネルギーミックスが大きく変わります。

» 施行規則の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメント公募要項


文/廣町公則

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